
東京ゲームショウ2026(2026年9月17日〜21日、幕張メッセ)で、中国のゲーム会社の出展が減った。昨年まで一般展示エリアに大型ブースを構えていた各社の名前が、今年の出展社一覧にない。出展社数そのものは過去最多を更新しているため、会場全体の規模が縮んだわけではない。公式発表の数字と出展社一覧で、何がどう変わったのかを確認する。あわせて、この変化が日本での採用や求人にどう関係するかを整理する。
出展社数は横ばい、展示面積は減少
主催のコンピュータエンターテインメント協会(CESA)が発表してきた出展規模を、2012年からまとめる。
| 年 | 出展社数 | 国内 | 海外 | 小間数 |
|---|---|---|---|---|
| 2012 | 209 | 126 | 83 | 1,609 |
| 2013 | 352 | — | — | 1,539 |
| 2014 | 421 | — | — | 1,715 |
| 2015 | 480 | 234 | 246 | 2,009 |
| 2016 | 614 | 269 | 345 | 1,939 |
| 2017 | 609 | 292 | 317 | 1,930 |
| 2018 | 668 | 338 | 330 | 2,338 |
| 2019 | 655 | 350 | 305 | 2,417 |
| 2020 | 432 | 209 | 223 | — |
| 2021 | 351 | 160 | 191 | — |
| 2022 | 605 | 312 | 293 | 1,881 |
| 2023 | 787 | 381 | 406 | 2,682 |
| 2024 | 985 | 450 | 535 | 3,252 |
| 2025 | 1,136 | 521 | 615 | 4,157 |
| 2026 | 1,138 | 540 | 598 | 3,999 |
2025年から2026年にかけて、出展社数は1,136社から1,138社へ2社増えた。出展国・地域は47から53に増えている。一方で海外出展社は615社から598社へ17社減り、小間数は4,157から3,999へ158小間(3.8%)減った。
今年は30回目の開催で、会期も4日間から5日間に延びている。規模を拡大する条件が揃っていた年に、展示面積だけが前年を下回った。リアル開催が2年続いた区間で小間数が前年割れしたのは、2013年(−70小間)、2016年(−70小間)、2017年(−9小間)に続いて4回目で、減少幅の158小間はこの中で最も大きい。
会場からいなくなった企業
公式の出展社一覧(9月15日版)を確認した範囲では、次の社名が見当たらない。
- HoYoverse(原神、崩壊:スターレイル、ゼンレスゾーンゼロ)
- NetEase Games(第五人格、逆水寒)
- Kuro Games(鳴潮)
- GRYPHLINE(アークナイツ)
- Perfect World Games
Century Gamesとテンセントは、ビジネスソリューションコーナーに出展している。テンセントのブースは会場で確認した。一般展示エリアには出ておらず、商談向けの出展になる。
中国からの出展社数については、オタク総研が「100社を下回った」、Kultur が韓国・毎日経済の報道として「2025年の123社から2026年は75社へ」と伝えている。CESAは国・地域別の内訳を公表していないため、どちらも第三者の集計であり、数字は一致していない。海外出展社が前年より減ったことは公式発表で確認できるが、中国の社数そのものは確定した値がない。
海外出展が増えた過去の局面 — 2013年と2016年
海外の出展社が急に増えた局面は、表の範囲で2回ある。
1回目は2013年。出展社数は209社から352社へ増えた。8月30日時点の発表では342社のうち海外が153社で、前年の83社から倍近くになっている。同じ年に小間数は1,609から1,539へ減った。
2回目は2016年。480社から614社へ増えたうち、国内は234社から269社、海外は246社から345社。増分の大半が海外で、この年も小間数は2,009から1,939へ減っている。
どちらも、商談を目的とした最小規模のブースが増えた局面にあたる。スマートフォンゲームが伸びていた時期で、アジア各国の開発会社は日本のパブリッシャーと組むルートを探していた。一般来場者に自社タイトルを見せる出展ではない。
内訳が公表されている2015年以降で見ると、海外が国内を上回った年は2015〜2017年、オンライン開催の2020年・2021年、そして2023年以降にあたる。2018年から2019年、および2022年は国内のほうが多い。
2023〜2025年 — 一般来場者に向けた大型ブースの時期
2023年からの3年間は、出展社数と小間数が同時に伸びている。小間数は2,682、3,252、4,157と推移し、3年で1,475小間増えた。海外の出展社が大きなブースを取るようになった点が、2013年や2016年の局面と違う。
構図が変わり始めたのは2019年ごろ。miHoYo(当時の社名)はTGS2019に初出展し、『原神』の試遊台を置いている。日本のパブリッシャーを介さず、自社で日本の消費者に向けて出展する形が中国企業に広がった。2024年時点では中国からの出展が約80社で、スマートフォンゲームの出展社のうち8割程度を中国企業が占めていたとされる(36Kr Japan)。
2025年のTGSについては、中国・韓国の企業がコスプレイヤーやコンパニオンを多数起用し、大きなセットを組んだブースを出していたとITmediaが報じている。NetEase Gamesは同社として過去最多規模のブースを出した。
この時期の大型ブースは、日本の一般ユーザーに向けた広告出稿に近い性格を持つ。日本法人を置き、日本語でのマーケティング、PR、コミュニティ運営の人員を雇い、日本のメディアやクリエイターとの接点を作る。TGSへの出展はその一部だった。
2026年に残ったもの
今年、中国系の出展として残っているのは、ビジネスソリューションコーナー、インディーゲームコーナー、そして周辺機器・ハードウェアのメーカー。
ゲーミングハードウェアコーナーには、EPOMAKER(11ホール 11-C01)、AkkoとGRAPHT(10ホール 10-C08)、Keychron(10ホール 10-E22、輸入元のコペックジャパン名義)、モニターメーカーのKTC(8ホール 08-N14)が出展している。展示内容と会場の様子はキーボード・ゲーミングギアの記事にまとめた。レコードチャイナも、ゲーム企業が減った一方で中国の製造ブランドが存在感を出しているとして同じ対比を伝えている。
一般来場者向けの大型ブースがなくなり、商談目的の小さなブースとハードウェアが残った。会場の構図としては2013年や2016年に近い。ただし当時は日本市場にこれから入ろうとする企業の商談で、2026年はすでに日本で売っている企業が露出を控えている状態なので、同じ形でも意味するところは違う。
理由として挙げられていること
出展を見送った企業が公式に理由を説明した例は、こちらでは確認できていない。報道や現地観測として挙がっているのは次の3点で、裏づけの強さはそれぞれ異なる。あくまで推測として扱ってほしい。
- 日中関係の悪化。2025年11月以降の政治的な緊張が文化・エンタメ分野にも及んでいるとする見方(オタク総研、Kulturが引用する韓国・毎日経済)
- 会期に9月18日が含まれること。中国では柳条湖事件の記念日にあたる(オタク総研)
- 2025年に新作の公開が集中した反動で、出展の費用対効果が下がったこと(オタク総研)
同じ企業の多くが2026年8月のgamescomには出展していたという指摘もある。ただし、gamescomの出展社一覧との照合はこちらでは行っていない。
採用と求人への影響をどう読むか
出展の見送りと、日本法人の縮小は別のこと
TGSへの出展は、その年のマーケティング予算をどこに配分するかの判断で、日本市場からの撤退とは別の話になる。各社の日本法人には実体がある。
- 網易娯楽株式会社(NetEase)— 2016年1月設立、東京都新宿区、従業員250名
- HoYoverseの日本拠点 — 2021年7月設立、東京都渋谷区、従業員60名
いずれも転職サイトGreenに掲載されている企業情報(2026年9月時点)。運営中のタイトルがある間は、日本語のカスタマーサポート、ローカライズ、コミュニティ運営、PRの体制が必要になる。サービスが続いていれば、この部分の人員がゼロになることはない。
影響が出やすいのは非開発職
展示会の出展をやめると、まず外部発注のイベント制作費が消える。社内で影響を受けやすいのは次の職種になる。
- プロモーション・イベント企画 — 出展そのものが業務の一部
- マーケティング — 使える施策の選択肢が減る
- PR・広報 — メディアとの接点の作り方を組み直すことになる
- コミュニティマネージャー — オフライン施策が減る
サーバー運用、QA、ローカライズ、カスタマーサポートは、タイトルが動いている限り必要人数が大きく変わらない。マーケティング職の内訳はゲーム業界のマーケティング職にまとめてある。
出展の有無は、応募先を見る材料としては弱い
応募先を検討するとき、TGSに出展しているかどうかは、その会社が日本で事業を続けるかどうかの指標としては精度が低い。確認するなら次のほうが実態に近い。
- 同じ職種の求人が継続して出ているか、あるいは募集が止まっているか
- 日本法人の設立時期と従業員数
- 運営中タイトルのアップデート頻度と、日本語公式アカウントの更新状況
- セールスランキングの推移
求人の追い方はゲーム業界の求人が見つからない理由と、探し方の手順に、ランキングから会社の勢いを見る方法はセールスランキング・ウォッチに書いた。
外資の日本拠点で働くときに確認しておきたいこと
今回の出展見送りは、日本での施策が本社側の判断で変わる例として見ることができる。外資系の日本拠点に共通する構造で、中国企業に限らない。
面接では、日本拠点の裁量がどこまでかを聞いておくと入社後の見通しが立てやすい。予算をどこで決めるのか、施策の企画は日本側で立てられるのか、日本独自のプロモーションを実施した直近の例は何か。募集職種ごとの実際の業務内容は外資系ゲーム会社の日本拠点は、何の仕事を募集しているのかで求人票をもとに整理している。
次に読む
- 大作を数年に一度出す体制と雇用 — コジマプロダクションの例から
- 外資系ゲーム会社の日本拠点は、何の仕事を募集しているのか
- 東京ゲームショウ2026、キーボード・ゲーミングギアの出展をまとめる
- 東京ゲームショウを、転職の目線で見る
出典
- 東京ゲームショウ 各年公式サイト「出展のご案内[前回の開催結果]」(2012〜2018年の出展社数・小間数)
- Gamer「『東京ゲームショウ2013』出展社数は過去最多の342社に」(2013年8月30日)
- GAME Watch「東京ゲームショウ2019、本日開幕!」(2019年・655社/国内350社・海外305社/2,417小間)
- 東京ゲームショウ2021 オンライン オフィシャルレポート(2020年・2021年の出展社数と内訳)
- 東京ゲームショウ2022 オフィシャルレポート(605社/国内312社・海外293社/1,881小間)
- コンピュータエンターテインメント協会 プレスリリース(2023年・2025年・2026年の出展規模)
- 36Kr Japan「東京ゲームショウ、中国要素に脚光」(2024年10月4日。2024年の内訳と中国の出展社数)
- ITmedia NEWS「中韓目立つ東京ゲームショウ2025……出展社は過半数が海外勢」(2025年9月27日)
- 東京ゲームショウ2026 出展社一覧(2026年9月15日版)
- オタク総研「ゲームショウに異変、中国ゲーム企業が大幅減少」
- Kultur「東京ゲームショウ2026が開幕。中国大手ゲームメーカーは軒並み出展せず」(2026年9月17日)
- レコードチャイナ「中国ゲーム企業が大幅減少した東京ゲームショウ、中国製造ブランドは逆に存在感」
- 転職サイトGreen 企業情報(網易娯楽株式会社、HoYoverse)
※この記事は2026年9月19日時点で確認できた内容をもとにしています。出展社数と小間数は主催者の発表値です。テンセントとゲーミングハードウェアコーナーの出展は会場で確認しました。中国からの出展社数については主催者が国・地域別の内訳を公表していないため、本文中の数値は報道による集計であることを明記しています。出展を見送った理由に関する記述は、各社の公式説明ではなく報道・観測にもとづく推測です。
【2026年9月19日 追記】台風25号の接近を受け、主催者は最終日となる9月21日(月・祝)の開催中止を発表しました(9月19日16時24分)。9月20日(日)は予定どおり開催されます。21日入場分のチケットは、購入したプレイガイドごとに払い戻しが案内されます。本文の会期に関する記述は、この発表より前の時点のものです。
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