
ゲーム業界の求人を探していて、こんな戸惑いを感じたことはないでしょうか。
「マーケティング」「プロモーション」「広告宣伝」「宣伝担当」「広報担当」。似たような募集が、会社ごとにばらばらの名前で出ている。どれが自分の探している仕事なのか判断できない。
これは探し方が悪いのではなく、実際に呼び名が統一されていないためです。
そしてもう一つ、この職種には特徴があります。入口にも、出口にもなりやすいことです。他業界の営業やリサーチャーから移ってくる人がいる一方で、マーケティングからプロデューサー、版権営業、人事へ移っていく人もいます。開発職のように「その職種の中で深めていく」形とは、キャリアの動き方が違います。
この記事では、呼び名の違いを整理したうえで仕事の内訳を見て、最後に、なぜこの職種が人の出入りの多い場所になるのかを説明します。
「マーケティング」に含まれる仕事
ゲーム会社の募集で「マーケティング」と書かれているとき、実際には複数の仕事が含まれています。応募前に、どれを指しているかを見極める必要があります。
ユーザーアクイジション(UA)/広告運用
広告を出稿してユーザーを獲得する仕事です。獲得単価と、そのユーザーがもたらす収益を見比べながら、予算の配分を調整します。
求人票では「広告宣伝」「宣伝担当」という名前で募集されていることもあります。数字を追う比重がもっとも大きい領域で、他業界で運用型広告を扱っていた人が、経験をそのまま持ち込みやすいポジションでもあります。
プロモーション企画
タイトルをどう打ち出すかを設計する仕事です。リリース時の施策、他社IPとのコラボ、イベント出展、店頭施策など。
UAが「数字で獲得する」仕事だとすれば、こちらは「話題をつくる」仕事に近くなります。会社によっては、これを含めて「宣伝」と呼ぶこともあります。
PR・タイトル広報
メディア対応、プレスリリースの配信、発表会の運営。ゲーム業界特有の要素として、配信者や実況者との関係づくりが加わることがあります。
「広報担当」という名前で募集されますが、会社の決算やIRを扱うコーポレート広報とは別の仕事です。この違いについては後述します。
データアナリスト
継続率、課金率、イベント参加率といった数字を分析し、施策に落とし込みます。マーケティング部門に置かれることも、独立した組織になっていることもあります。
SNS・コミュニティ/動画施策
公式アカウントの運用、動画コンテンツの企画、ユーザーコミュニティとの関係づくり。「コミュニティマネージャー」「コミュニティ担当」という名前で募集されることもあります。
プレイヤーの反応を拾い、公式からの発信を設計し、ときにはイベントや大会の運営にも関わる。広い意味ではマーケティングの一部ですが、ユーザーとの距離が近いぶん、運営職の「SNS・コミュニティ運営」と業務が重なります。どちらの部署が持つかは会社によって変わります。
コミュニティ担当の専任募集が減っている理由
このポジションを志望するなら、知っておいたほうがいいことがあります。専任での募集は、以前と比べて少なくなってきています。外部への委託で対応する会社が増えました。
理由ははっきりしています。運用の負担が大きい割に、メリットを示しにくいからです。
コミュニティ運営は、日々の投稿、ユーザーの反応の確認、荒れたときの対応と、手が止まらない仕事です。それでいて、その成果を数字で説明するのが難しい。広告運用ならCPIやROASで「いくら使って、いくら返ってきたか」を示せます。データ分析なら継続率の改善幅を示せます。ところがコミュニティの手応えは、同じようには測れません。
負担が重く、貢献を数字で示しにくい業務は、専任を置く根拠が立ちにくくなります。結果として外注に回るか、運営チームやマーケティングチームの担当者が兼務する形に吸収されていきます。
ただし、業務そのものが消えたわけではありません。置かれる場所が変わっただけです。コミュニティ運営に関心があるなら、この名前の求人を待つより、運営職やマーケティング職の募集要項の中に該当する業務が含まれていないかを見るほうが、選択肢は広がります。
そして、もしこの領域で長く働きたいのであれば、自分の仕事を数字に接続して語れるかどうかが分かれ目になります。「盛り上げた」ではなく「何がどう変わったか」を示せる人は、どの部署に置かれても必要とされます。この職種が削られやすい理由が測りにくさにあるなら、測れる形で語れることが、そのまま自分を守る材料になります。
会社によって、呼び名が違う
ここが冒頭で触れた問題です。同じような仕事が、会社ごとに違う名前で募集されています。
主な呼び名を整理すると、次のようになります。
| 求人での呼び名 | 業務の寄り |
|---|---|
| マーケティング | もっとも広い呼び方。UAからPRまで含むことも、データ分析中心のこともある |
| プロモーション | 施策の企画寄り。話題づくり、コラボ、イベント |
| 広告宣伝 | 広告の出稿と予算管理が中心。UAに近い |
| 宣伝担当 | 実際の求人票ではプロモーション企画・メディア対応寄りのことが多い。「広告宣伝」と同じ意味で使われるとは限らない(詳しくは後述) |
| 広報担当 | メディア対応、情報公開。PR寄り |
| コミュニティマネージャー/コミュニティ担当 | SNS運用、ユーザーとの関係づくり。広い意味でのマーケティング。ただし専任の募集は減少傾向 |
厄介なのは、この対応が絶対ではないことです。「マーケティング」という募集がUA専任のこともあれば、プロモーションからPRまで一人で見るポジションのこともあります。会社の規模が小さいほど、一人が持つ範囲は広くなりがちです。
「宣伝担当」は、広告宣伝と同じとは限らない
呼び名対応表では「宣伝担当」を保留にしていましたが、実際の求人票を確認したところ、傾向が見えました。
「宣伝担当」という名前の求人は、広告運用(UA・CPI管理)より、プロモーション企画やメディア対応を中心に募集していることが多いです。
たとえば、エンタメ業界の宣伝職の求人では「プロモーションの方針策定・企画提案」「宣伝イベントの実施・出展」「各種媒体・メディア対応」が業務として並びます。ゲーム業界の宣伝プロモーション求人でも、求人票を確認した範囲では「プロモーションプランの作成」「メディア向け宣伝資料の制作、メディア対応」といった業務が前に出ており、獲得単価の管理を主軸に据えた書き方はあまり見かけませんでした。
つまり「宣伝担当」は、社内的には「広告宣伝」と同じ意味で使われることもありますが、求人票の上では、どちらかというとプロモーション寄りの言葉として使われているようです。この記事の冒頭で「呼び名を変えて何度か探す」ことを勧めたのは、こうした揺れがあるためでもあります。
「広報担当」には2種類ある
特に注意したいのが広報担当です。ゲーム会社の広報には、性質のまったく違う2つがあります。
タイトル広報 — ゲームそのものの情報を発信する仕事です。新作の発表、アップデート情報の告知、ゲームメディアへの対応、配信者や実況者との関係づくり。この記事で扱っているのはこちらで、マーケティング部門に置かれることが多い役割です。
コーポレート広報 — 会社そのものについての情報を扱う仕事です。決算発表やIR、経営に関する対外発信、採用広報など。管理部門やコーポレート部門に属することが一般的です。
求人票にどちらも「広報」としか書かれていないことがあります。募集要項に「タイトル」「作品」「ゲームメディア」といった言葉があればタイトル広報、「IR」「決算」「株主」とあればコーポレート広報と見分けられます。志望する方向と違うところに応募してしまわないよう、ここは確認してください。
結局、何を見ればいいか
職種名ではなく、募集要項の業務内容の記述を読んでください。
- 「広告運用」「媒体折衝」「予算管理」 → UA・広告宣伝寄り
- 「施策企画」「イベント」「コラボ」 → プロモーション寄り
- 「メディア対応」「リリース配信」 → タイトル広報寄り
- 「分析」「KPI」「レポーティング」 → データ分析寄り
検索するときも、ひとつの言葉で諦めないことをおすすめします。「ゲーム マーケティング」で出てこなくても、「ゲーム 宣伝」「ゲーム プロモーション」「ゲーム 広告宣伝」で別の求人が出てくることがあります。呼び名を変えて何度か探すのが、この職種では有効です。
面接では、実際の業務範囲と、チームの人数構成を確認しておくと入社後の想定が立てやすくなります。
押さえておきたい指標
異業種からマーケティング職に応募するとき、最初につまずきやすいのが指標の名前です。基本的なものを整理しておきます。
獲得に関するもの
- CPI(Cost Per Install) — インストール1件あたりにかかった広告費
- CPA(Cost Per Action) — 会員登録など、特定の行動1件あたりの費用
継続に関するもの
- 継続率(Retention Rate) — インストールから1日後、7日後、30日後に戻ってきた割合
- DAU / MAU — 1日あたり/1か月あたりのアクティブユーザー数
収益に関するもの
- ARPU — ユーザー1人あたりの平均収益
- ARPPU — 課金ユーザー1人あたりの平均収益
- LTV(Lifetime Value) — 1人のユーザーが生涯でもたらす収益
投資対効果
- ROAS(Return On Ad Spend) — 広告費に対してどれだけ収益が戻ったか
実務では、これらを単独ではなく組み合わせて見ます。たとえばCPIが安くても、獲得したユーザーの継続率が低ければLTVが伸びず、ROASは合いません。「安く集める」ことと「良いユーザーを集める」ことは別だ、という判断がこの職種の中心にあります。
他業界で運用型広告を扱っていた方であれば、構造は理解しやすいはずです。用語を置き換えるだけで済むことも多いので、面接前に一通り目を通しておくと会話が噛み合います。
マーケティングは「入口」になる
ここからが本題です。マーケティング職には、他の職種から人が入ってきます。
営業から
法人営業や広告営業からの移動は、よくあるルートです。特に広告代理店などの支援会社から、ゲーム会社という事業会社側へ移る流れは王道と言えます。
支援する側は「クライアントの予算を預かって成果を出す」立場ですが、事業会社側は「自社の予算を自分で配分し、事業の数字に責任を持つ」立場になります。判断の範囲が広がるのが、この移動の魅力です。
ただし、広告営業の経験がそのまま通用するわけではありません。 業務の中身はかなり違うため、一から学び直す姿勢が必要です。
そのうえで、前職の知識や人脈は生きます。広告代理店から事業会社のマーケティング職への転職を扱った複数の記事を見ても、補うべきものとして共通して挙がるのは次のような点です。
- 広告運用の実務経験 — 代理店では企画・提案・クライアント対応が評価されますが、事業会社側では「実際に広告予算をいくら運用してきたか」を問われる場面が増えます
- 事業目線 — 代理店的な発想の延長で施策を考えると、方向性がずれることがあると指摘されています。事業KPI(売上、利益、LTVなど)にコミットする視点への切り替えが必要です
- 長期的にブランドを見る視点 — 短期の成果を出し続ける代理店の仕事に対し、事業会社では同じブランド・タイトルに長く関わり、理解を深めていく姿勢が評価されやすいとされています
一方で、広告営業の経験者ならではの強みもあります。事業会社のマーケターは、自社のことしか知りません。 広告営業として複数のクライアントを見てきた人は、他社がどう施策を組み立てているかの事例を数多く知っています。「一から学ぶ姿勢」は必要ですが、持ち込めるものが何もないわけではありません。
これらはゲーム業界に限らず、広告代理店から事業会社への転職一般で語られている内容です。ゲーム特有の指標(CPI、LTV、ROASなど)を補う必要がある点は、この記事の前半で触れたとおりです。
「広告営業」と、それ以外の法人営業とで、この移動のしやすさに差はあるのか。現実的な転職のしやすさで言えば、差はあります。
マーケティング職で実際に成果を出すために重要なのは、広告そのものの知識よりも、学び続ける姿勢、論理的思考、関係構築力といったソフトスキルだと言われます。これは広告営業に限らず、どの営業経験からでも積み上げられるものです。
ただし、転職市場での通りやすさで言えば、広告営業のキャリアをどこかで挟むのが王道です。人材営業など、広告と直接関係のない法人営業から一足飛びにマーケティングへ移るより、広告営業を経由したほうが、採用側からの説明がつきやすくなります。「営業一本」より、「営業 → 広告営業 → マーケティング」という順で職務経歴を積む形のほうが、書類選考の通過という実務的な意味では現実的です。
調査会社のリサーチャーから
市場調査やユーザーリサーチを担当していた人が、マーケティング職に移るケースもあります。
「誰が、何を、なぜ求めているか」を調べて言語化する力は、そのまま施策設計の土台になります。調べて終わりではなく、調べた結果を打ち手に変えるところまでが仕事になる、という変化があります。
マーケティングは「出口」にもなる
そして、マーケティングから他の職種へ移る流れもあります。こちらのほうが、あまり語られていません。
プロデューサーへ
マーケティング経験者がプロデューサーになるルートがあります。
プロデューサーはタイトルを事業として成立させる役割です。誰に届けるか、いくらで獲得していくら回収するか。この判断はマーケティングの仕事そのものと重なります。
一般に語られるプロデューサーへの道筋は「プランナー → ディレクター → プロデューサー」という開発側からのルートですが、マーケティング側から上がる道もあるということです。作る力ではなく、売る力から事業を持つ形になります。
ただし、補うべきものもあります。マーケティング側は数字とユーザーには強くても、開発現場そのものの理解は薄くなりがちです。加えて、見るべき範囲がマーケティング施策からタイトル全体の予算・人・スケジュールへと広がるため、より広範囲のマネジメント能力が求められます。
版権営業(ライツ営業)へ
自社のIPを他社に使ってもらう、あるいは他社のIPを使わせてもらう仕事です。コラボ企画、キャラクターの許諾、商品化。
この仕事は、多くの場合ライセンシー(IPを使わせてもらう側)の立場から、ライセンサー(IPを使わせる側)に対して営業をする仕事です。自社がそのIPを使いたい側として、権利元に企画を持ち込み、使用の許諾や条件を交渉します。会社を移るという意味での「異動」ではなく、立場はそのままに、交渉の相手が権利元に変わるイメージです。
マーケティング・プロモーションの業務の中には、他社IPとのコラボ企画やタイアップ、版権元の監修対応が実際に含まれています。そこで築いた人脈と、権利元とのやり取りの経験を、そのまま持ち込めるのがこのルートです。
版権営業になると、社内外との折衝の頻度がプロモーション担当だったときより増えます。権利元の意向、自社の販売計画、他部署の要望。それぞれの立場が違う相手の間に立つことになるため、バランス感覚と、粘り強いコミュニケーション能力が求められます。
人事へ(そして人事からマーケティングへ)
意外に思われるかもしれませんが、マーケティングと人事のあいだにも行き来があります。
背景にあるのが「採用マーケティング」という考え方です。採用を、母集団の形成から選考、入社までの一連の流れとして捉え、マーケティングの手法を持ち込む取り組みが広く行われるようになりました。ターゲットの定義、訴求内容の設計、チャネルごとの効果測定。やっていることの型は、ユーザー獲得とほぼ同じです。
この移動は双方向で、人事からマーケティングへ移る例もあります。
なぜマーケティングは人の出入りが多いのか
5つの移動を並べてみると、共通する仕組みが見えてきます。
営業から、リサーチャーから。プロデューサーへ、版権営業へ、人事へ。方向はばらばらですが、どの移動にも同じ型が通っています。
対象を定義し、訴求を設計し、反応を測って調整する。
マーケティングはこの型そのものを扱う仕事です。そして、この型は相手を入れ替えても機能します。
| 相手 | 職種 |
|---|---|
| ゲームのユーザー | マーケティング |
| 事業として届ける対象全体 | プロデューサー |
| IPを使いたい企業 | 版権営業 |
| 入社してほしい候補者 | 人事・採用 |
マーケティングは、対象が変わっても持ち運べる型を扱う職種です。そのため、業界に入る入口にも、次の職種へ移る出口にもなります。
マーケティング職に就くことは、移動先の選択肢が広い場所に立つという選択でもあります。
年収について
「ゲーム業界のマーケティング職」に絞った年収統計は、運営職と同様、あまり整備されていません。求人票に記載された金額を個別に確認するのが確実です。
傾向として、UA・広告運用のように予算規模と数値責任が明確な領域は、実績を数字で示しやすいぶん交渉の材料を持ちやすくなります。担当した予算規模、改善した指標、その結果。応募時にはこれらを整理しておくとよいでしょう。
まとめ
- この職種は会社によって「マーケティング」「プロモーション」「広告宣伝」「宣伝担当」「広報担当」「コミュニティマネージャー」と呼ばれる。求人を探すときは呼び名を変えて何度か検索する
- コミュニティ担当の専任募集は減少傾向。関心があるなら、運営職やマーケ職の業務内容にその要素が含まれていないかを見る
- 「広報担当」にはタイトル広報とコーポレート広報の2種類があるので、募集要項で見分ける
- 「マーケティング」にはUA、プロモーション、PR、データ分析、SNS施策が含まれる。求人票の職種名では判別できないため、業務内容の記述を読む
- 異業種から来るなら、CPI・LTV・ROASなど基本指標に目を通しておく
- 営業やリサーチャーからの入口があり、プロデューサー・版権営業・人事への出口がある
- 共通するのは「対象を定義し、訴求を設計し、反応を測る」という型。相手が変わっても持ち運べる
- キャリアの選択肢が広い場所に立てる職種
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他業界の経験は、ゲーム会社のどの職種につながるか 広告運用、リサーチ、広報。いまの経験がどこにつながるかを整理します。
ゲームの「運営」とは何をする仕事か マーケティングと業務が重なる領域。違いと共通点を確認しておくと選びやすくなります。
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